筆力向上85日目。

風呂場に入った私を待っていたのは蜂だった。
蝉と間違えるような大きな羽音で私の周囲を飛び回り、物陰に隠れた。
私は以前蜂に刺されたトラウマから非常に蜂が怖い。畏怖している。
私は風呂場を飛び出すと全裸で殺虫スプレーを探した。
幸い予想していた場所にスプレーはあり、私はそれを素早く取ると再び風呂場という名の戦場へと向かった。
蜂はまだ物陰に潜んでいるようだった。
私は目測をつけ、スプレーの引き金を引く。蜂がうごめく音。スプレーが噴射される音が周囲に響く。
しばらくすると蜂が姿を現した。苦しそうにもがいているが、まだ油断はできない。
この蜂、改めて見ると大きい。こんな蜂に刺されたらアナフィラキシーショックで死亡だぜ、と私はその時思ったとか思わなかったとかそんなことはどっちでもいい。
その後も何度かスプレーを噴射された蜂はとうとう動かなくなった。
私の心は落ち着きを取り戻し、それと同時に後悔の念もこみ上げた。
無暗な殺生をしてしまったと。
殺さなくても逃がせばよかったのではないかと。

ごめんよ、蜂さん。私も必死だったんです。そんな思いを抱きながら私は風呂を済ませたのであった。

完。