モールス 感想。

 映画を観てきたので、感想を書こうと思います。
 今回観たのは「モールス」です。
 ジャンルはホラーとかスリラーとかそういう感じだと思います。Rー15指定で、結構グロテスクなシーンもありました。
 作品の持つ薄暗い雰囲気がとても良く、加えてBGMが場面の臨場感を上手く伝えてくれていました。とてもハラハラしました。
 アメリカの映画ですが、アメリカっぽくない印象。ヨーロッパ方面の映画の雰囲気に似ている様な気がしました。
 登場人物の心境を直接的に描写せず、視聴者が行動から想像して汲みとるように作られていたように思います。分かりやすさや、爽快感とは方向性が違いますね。
 事前に殆ど情報を仕入れずに観たので、予想していたストーリーとはかなり差異がありましたが、楽しく観ることができ、満足できました。
 
 以下、作品の内容に触れて感想を述べようと思いますので、未視聴の方は注意して下さい。
 
 アビーがただの女の子ではない、というのは事前に知っていた情報でしたが、まさかヴァンパイアだとは思いませんでした。もう少しリアルな雰囲気のサスペンス物かと思っていた私は肩透かしを食らった感じでしたが、楽しめたので結果オーライです。
 モールスというタイトルの割に、モールス信号が脇役レベルでしか使われていないのはちょっと残念でした。まぁでもタイトルをヴァンパイアとかにしたらB級臭半端ないですから仕方ないんでしょうか。
 沢山人が死んでるのに、意外と大騒ぎにならないことを筆頭に気になる部分というのは多くありました。終盤オーウェンのピンチをどうしてアビーが知り得たか、とか、オーウェンは、アビーが生きるためとはいえ殺人を犯していることについて何とも思っていない風なのとか。この映画は人の死の扱いがかなり淡々としていて、あっさり済ませているので、こんな感じでいいの? と思うことが何度かありました。
 とまぁ色々気になる部分があったんですが、それを放り出してまで面白いと思わせた要因というのは、オーウェンとアビーの関係の描写が凄く良かったからなんです。
 12歳の少年が求める普通の恋愛と、普通の女の子ではない少女のギャップ。
 拒絶され、離れていってしまうことを恐れている少女の心境と、恐怖の対象に恋をしてしまった少年の葛藤といった辺りが、観ていて胸を締め付けられる感じでした。
 この部分だけを切り取ると恋愛映画としてもいい気もします。
 ですが、映画全体を見て冷静に考えると、違った見方ができると思います。
 アビーと一虬にいた男性、彼は何十年か前、オーウェンと同じようにアビーと出逢い、恋をして二人で過ごすようになったんじゃなかろうかと。そして彼女のために人殺しをして、血を集めていた。だが彼は死んでしまう。すると彼女にとって代役が必要となる。それがオーウェン、という風な背景が見えるような見えないような。
 アビーが意図的にオーウェンを魅了し、自分に必要な血を集めさせる役をさせようとしていたのかは分かりませんが、オーウェンはあの男性のような人生を歩んでいくことは、この映画の終わりで示されていたように思います。
 純愛の裏にはもしかしたら打算が隠れているのかもしれません。怖いです。
 といった感じで二人の関係というのはとても面白いですね。
 私としては、純愛だったということにしたほうがハッピーエンドで好きなんですけど、いかがでしょう。
 終わり。