きびだんご。

 きびだんごを大量に食べた後、お腹が痛くなってトイレに篭っていました。
 そこでふと思いついたのです。
 桃太郎という凄く有名なお話があります。
 そのお話の中で、きびだんごを欲しがる動物が出てきますよね。サルとキジとイヌでしたっけ。その三匹に桃太郎は鬼退治への協力という条件を出して、きびだんごを一つあげます。たった一つです。
 鬼と戦うんですよ。暴虐非道の限りを尽くし、村々から金品やら食べ物やらを奪うような悪の塊ですよ。そいつらを退治しに行くということは、当然命がけです。
 そのことを踏まえて考えてみると、桃太郎は「お前らの命なぞ、きびだんご一つ分でしかないわ」と思っているのかと邪推してしまいます。現に思っていたとしたら桃太郎、なかなか腹黒いです。せめてきびだんごは好きなだけ食べさせてあげて欲しいです。
 という桃太郎冷酷説をまず思いついたのですが、ヒーローであるはずの桃太郎が冷酷だとはあまり考えたくありません。
 
 そこで第二案として思いついたものをご披露します。
 
 桃太郎が生まれた土地は麻薬栽培が盛んな土地でした。加工が盛んだった土地かもしれません。とにかく麻薬と深い関わりを持つ土地だったのです。しかし麻薬の中毒性は皆さんも承知の通りで、非常に危険です。桃太郎の住む土地でも、お上から麻薬の取り扱いに大きな規制が掛けられ、持っているだけでも打ち首とかそういう重大な罪を負わせられるようになっていました。それでも麻薬を求める者、麻薬を利用しようとする者は大勢いました。
 桃太郎のおじいさんとおばあさんもその中の一人です。麻薬を密造して生計を立てていました。ですが最近は鬼がこの辺り一帯の地域を取り仕切っていて、上質の麻薬を無償で提供することや、売上の何割かを納めること等を一方的に決められてしまっていました。売上のほとんどを持って行かれる状態に、おじいさんとおばあさんは耐え切れず、桃太郎に鬼の退治を頼むのです。
 そして持たせたものがきびだんご、ではなく上質な麻薬。しかし麻薬と言ってしまうとお上の目もあるので、隠語として「きびだんご」という言葉を使ったのです。この地域で、きびだんごといえば麻薬を指すことは常識でした。
 かくして桃太郎は旅に出るのですが、上質な麻薬を持った桃太郎が鬼退治に行く、という噂を聞いた麻薬ジャンキー達は桃太郎におすそ分けを貰おうと近づいて来るのです。
 それが有名なサル、キジ、イヌの三匹でした。
 彼らはきびだんごを欲しがっていますが、それはもちろん言葉通りの意味ではありません。麻薬を欲しがっているのです。
 たった一つ(一回分)のきびだんごで命を掛ける決断を下した理由に信ぴょう性が出てきました。
 麻薬には戦意高揚の作用があります。きびだんごを美味しく頂いた桃太郎一行が、ハイなテンションで鬼たちを恐れることなく突っ込んでいけたのも、納得です。
 鬼たちは壊滅し、おじいさんやおばあさんは元通り麻薬の密造をしながら平和に暮らしましたとさ。
 おしまいおしまい。
 
 悪ふざけが過ぎた感がありますが、こんな妄想をしていましたよ、というお話でした。
 おわり。